公認会計士としてのキャリアを活かしながら、異なる業界や職種へ転職する際に気を付けておきたい注意点について解説。スムーズなキャリアチェンジのために、ぜひ覚えておいてください。
公認会計士の資格を活かせる業界は多くありますが、転職先によっては現職よりも年収が下がる可能性があります。事業会社の経理・財務部門への転職の場合、監査法人で得ていた報酬よりも下がる傾向にあります。特に部門の管理職候補として転職する場合は経理・財務の実務経験を問われるケースもあります。
ベンチャーやスタートアップ企業の場合、特に初年度の年収が下がる傾向にあります。また、異業種や未経験分野にチャレンジする場合も初期年収は下がる公算が大きくなります。一方、CFOやFP&A、内部監査などの職種に就ければ、減少幅は少なく抑えられるでしょう。
まずは、年収の減少幅が許容できるか否かを判断しましょう。許容範囲内の場合は、転職後の年収推移を調べ、将来的に回復・向上の見込みがあるか、把握しておきましょう。
転職後の職場や業種・業界に役立つスキルや資格の取得をしておくことで、年収の減少を抑えられる可能性があります。業界調査を徹底し、新しい職に就くまでの間にできる限りのスキルアップをしておきましょう。
面接や面談の場で交渉することで、年収の維持を実現できるかもしれません。その場合、自身がどれだけその会社で活躍できるかをプレゼンする必要があります。プレゼンの結果次第では、提示される年収が上がることも。ただし、風呂敷を広げすぎると次年度の報酬に影響しかねないので、行き過ぎたアピールは禁物です。
キャリアチェンジすることでこれまでとは異なるスキルや知識が求められます。
例えば、監査法人は「チェック・指導」する立場ですが、事業会社は「主体的な意思決定・実行」する役割を求められます。また、プロジェクトの初期段階から関わる点も適応する必要があります。
また、事業会社では会計スキルはもとより、経営戦略や税務、テクノロジー、マネジメントなどのスキルが求められることがあります。
転職先の事業や業務を理解し、入社前に可能であればプロジェクトに関わることで、いち早く順応できるでしょう。また、新たなスキルを身に着け、転職先での即戦力を目指すことも必要。先輩社員からのレクチャーを受け、必要に応じて指導してくれる会社を選ぶと、順応までが早くなるでしょう。
キャリアチェンジをすることで注意すべき点として、新たな人間関係の構築が必要になることが挙げられます。
監査法人での業務はチーム単位で行なったのに対して、事業会社やコンサルティングファームなどでは、個人の裁量に任されることも多くなります。また、指示の系統も異なるので、組織文化を理解し、溶け込まなくてはいけません。
新たな職場で知り合った人とのつながりが、自分では考えていなかったキャリアに発展することもあります。社内だけでなく業界内で積極的に人脈作りを進め、自身の可能性を広げましょう。
各種SNSや勉強会などの機会を逃さず、積極的に人脈を広げましょう。転職前から話を聞いておくことで、自身の心の準備も整います。入社後は社内の様々な人と顔を合わせ、積極的に組織に溶け込みましょう。
監査法人からのキャリアチェンジ先として選ばれやすい3つの業界について、それぞれに特有のリスクとその対策をまとめています。
コンサルティング業界は、クライアント企業の課題解決に向けて、定められた期間内に成果を求められます。そのため、長時間労働が常態化しやすく、プライベートの時間が圧迫される可能性があります。
また、専門性のミスマッチが起こる可能性もあります。すべてのコンサルティングファームで公認会計士のスキルが活かせるとは限らず、担当するクライアントの業界や対応する業務内容によっては、会計以外のスキルや知識が求められます。
長時間労働が常態化しやすい点に関しては、タスク管理のスキルを伸ばすことで、軽減可能です。自分で納期や締め切りをコントロールできるものをいち早く対応する癖付けをしておけば、クライアント都合の差し込みがあってもある程度の余裕を持って対応できるでしょう。
専門性のミスマッチが起こる可能性に対しては2つの対策が挙げられます。ひとつは自分の知識やスキルを向上させることです。幅広い分野の知識・スキルを身に着ければ、活躍の幅が広がるでしょう。
もうひとつは、最初から会計系のコンサルティングファームに絞って求人を探す方法が挙げられます。ただし、この方法を取ったとしても将来的に専門性の異なる分野に関わる可能性があるので、スキルアップを図る方がより有効でしょう。
コンサル業界と同様、経理・財務職も、会計以外の業務に携わる可能性があります。税務や経営管理など、多岐に渡る業務への対応を求められた場合、業務量が自身のキャパシティを超える可能性があります。
また、監査法人と比較して給与水準が低い企業もあり、転職先によっては大幅な減収の可能性があります。
業務範囲が広がる点については、自身のスキルアップでカバーしましょう。スキルアップの効果により、自身のキャリアの可能性が広がり、自分では考えなかったステージに手が届くかもしれません。
給与水準に関しても、自身のスキルアップである程度はカバー可能でしょう。また、転職活動時の面接や面談で、給与などの条件面を細かく話し合うことも重要です。
スタートアップ企業特有の転職リスクは、やはり不安定な経営基盤が挙げられます。そもそもの資本金の額や資金調達力に乏しいと、市場の変化に耐えきれず、企業そのものの存続ができなくなるケースが考えられます。
また、IPOを考えている企業の場合、業務プロセスが整理されていないケースがあります。組織や業務フローが確立されていないと、仕組みを構築しながらの業務への対応を求められます。
企業そのものの存続リスクに関しては、上場企業であれば四季報やIR情報を基に判断できます。それ以外の企業に関しては、与信管理会社が公表している情報を参考にしましょう。
フローやプロセスが未整理であることに対しては、より効率的で生産的な仕組みを、自身が中心となって構築していきましょう。その際、「完璧」でなくてもスピードを重視して、動きながら改良していくことを念頭に置くと成功しやすくなります。
公認会計士がキャリアチェンジで失敗しないためには、以下のポイントが重要です。
これまでと異なる分野や業界への転職を狙うわけですから、現状のスキルセットを見直し、目標とする職種に必要なスキルや資格を明確にすることが不可欠。例えば、IT業界への転職を希望する場合、プログラミングの知識やデータ分析のスキルなどが求められるでしょう。
また、国際的な業務に携わる場合、TOEICやTOEFLなどの英語力はもちろんのこと、USCPAのような国際資格が有利に働きます。現地での勤務が想定される場合は、現地語の習得も必須。
これらのスキルや資格を取得することで、転職市場での競争力を高め、より良い転職を成功させる近道となります。
効率的かつ効果的な転職活動を進めるためには、会計士の転職に強いエージェントの活用が不可欠です。エージェントは市場動向に精通していることはもちろん、個々のキャリアプランに合わせたアドバイスやサポートも受けられます。
面接対策や書類の添削、入社条件の交渉など、転職活動全般にわたる支援を受けることで、成功率が高まります。また、自分では見つけられなかった「掘り出し物」の求人情報を紹介してくれる可能性もあるので、転職で失敗したくない人にはエージェントへの相談を強くお勧めします。
公認会計士から他業種へのキャリアチェンジにはリスクがあります。ですが、自身が思い描くキャリアパスを実現するためには、ここで挙げたような注意点を頭に留めて、スキルを磨いて準備を進めましょう。自分一人での準備に少しでも不安がある方には、専門家のサポートをおすすめします。
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