独立を考える公認会計士にとって、監査と税務のどちらを軸にするかは将来を左右する大きな選択です。会計知識を基盤とする点は共通していますが、その目的やクライアントとの関わり方は根本から異なっています。
ご自身のキャリアを築く上で、この本質的な違いを深く理解しておくことが何より重要になるでしょう。
監査業務の使命は、財務情報の信頼性を守り、資本市場の健全性を維持することにあります。報酬を支払う企業のためではなく、その情報を利用する投資家といった外部の関係者のために行われる、まさに「市場の番人」としての役割です。
一方で税務業務の使命は、納税者がルールに沿って適正な納税義務を果たせるよう支えることであり、この社会的な立ち位置の違いが関係性にも影響します。
監査の主な対象は法律で監査が義務付けられる大企業であり、不正や誤りの可能性を疑う「職業的懐疑心」が求められます。クライアントの主張を鵜呑みにせず、独立した立場を保つことが大切な仕事です。
対照的に税務では中小企業や個人事業主を相手に、信頼に基づくパートナーとしての関係を築くことが多く、求められる思考様式も異なります。
監査業務では、財務諸表全体に誤りがないことの証拠を集めるため、現物を直接確かめる「実査」や取引先に残高を問い合わせる「確認」などを行います。思考の面では、業績を良く見せようとする動機から生まれる、売上の水増しといった「過大計上」への警戒が中心です。
他方、税務の中心は会計上の利益と税法ルールとの差を調整する「税務調整」で、逆に納税額を減らそうとする「過少申告」を警戒します。
独立後の働き方として、監査は監査法人の繁忙期に専門家として加わる「フリーランス型」が一般的です。高い時給や日当が期待できる「プロジェクト型」の収益ですが、収入が時期に左右されやすく安定しにくい面も持ち合わせています。
一方で税務での独立は、クライアントと顧問契約を結ぶ「ストック型」が中心となり、専門知識だけでなく経営者としてのスキルも求められます。
監査と税務は求められるスキルや働き方、収益の上げ方が全く異なっています。監査は高い専門性を武器に個人のスキルを追求する「エキスパート」としての道であり、税務は顧客に寄り添い事業の安定を築く「経営者」としての道とも言えます。
どちらが優れているということではなく、ご自身の価値観やライフプラン、そして経営への適性なども含めて深く見極めることが重要です。
迷うことがあれば、まずは転職エージェントに相談してみても良いでしょう。自分が思い描くキャリアや行うべきことを整理でき、よりよい道を選ぶヒントになるはずです。
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